希世子「でさァ、その男がまった最悪なのよォ。彼女ほっぽって逃げ出しちゃって!」
 
有希「そうなの?」
 
希世子「そーなの! もう最悪じゃない?」
 
有希「うーん……話だけじゃわからないわ……」
 
 
 
いつもの日常。
いつもの会話。
 
変わらない、変わることのない時間の流れ。
 
 
 
あかり「…………」
 
希世子「ねェ、あかりはどー思う?」
 
有希「あかり、ちゃん?」
 
あかり「え……? あ、ごめん聞いてなかった」
 
希世子「もー。あかり、最近ぼんやりしすぎ! 一体どうしちゃったのォ?」
 
あかり「そ、そう? そんなにぼんやりしてる?」
 
有希「具合、悪いの?」
 
あかり「う、ううん! 全然! 元気だよ!」
 
希世子「あんたのはたまにカラ元気だから怖いのよォ」
 
 
 
そんなことは、ないんだけどな……。
心配する二人に曖昧な笑みを返し、私は窓の外へ目を移す。
 
 
 
   「にっしく〜〜〜ん!!」
 
 
 
そして、お昼休みも終わりかけた頃、いつもの様にその人はやってきた。
 
 
 
 
或るTHSCの日常。
 
 
 
 
希世子「あああ……沢登先輩が来た……」
 
有希「最近頻繁に来るわよね、沢登先輩」
 
あかり「……そうだっけ?」
 
希世子「用もないのに来るじゃない」
 
有希「確かに。この間なんて、キヨちゃんのお弁当のから揚げだけ食べて帰ったわよね」
 
あかり「あはは……そういうこともあったよね……」
 
希世子「ああ、あったわねェ……あれ、なんだったんだろう」
 
沢登「こら、君ら。僕を無視するとはいい度胸だ」
 
希世子「さ、沢登先輩ッ!?」
 
沢登「ん? なんだね?」
 
希世子「あの……今日は、一体どういったご用件で?」
 
沢登「そうそう。僕は西くんに用事があるのだよ」
 
あかり「私……ですか?」
 
沢登「そうさ。ちょっと来たまえ」
 
あかり「わッ」
 
 
 
先輩は私の腕をつかみ上げ、私を椅子から立たせると、
抵抗する間を与えることなく廊下へと引き摺りだしてくれたのだった。
 
 
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