「はあ……。しょうがないから委員長探してこようかな」
 
あかり「あ、私も付き合うよ。いくらなんでも遅すぎるよね」
 
 
 
沢登先輩の風紀集合は、基本的に放課後すぐに集まれという意味なのだ。
掃除などがある場合は、多少遅刻しても説明さえすれば文句は言われない……こともある。
 
 
 
「じゃあ、俺達委員長を探しに行ってきますから」
 
内沼「あ、もう探すの面倒くさいし、いっそ校内放送使っちゃう?」
 
あかり「ってことは放送部に頼まないといけませんよね……」
 
 
 
放送部といえば、沢登先輩いわく、
 変態腹黒詭弁士の桐島真人(きりしままこと)先輩が部長を務めている。
笑顔の裏に、いろんな悪意が見え隠れするらしいのだが、私にはよく分からない。
 
 
 
乃凪「あー……放送部だと桐島とかだよな……あんまり関わりたくないよなぁ」
 
内沼「確かにー」
 
桐島「ご挨拶だなぁ。一体俺の何が気に食わないっていうのかな?」
 
乃凪「……胸に手を当てて考えてみろ」
 
 
 
 
或るTHSCの日常。7
 
 
 
 
乃凪先輩の疲れきった声を機に、声のする方を一斉に振り返ると、
そこには噂の人物が椅子に座ってくつろいでいた。
 
 
 
あかり「桐島先輩……いつの間に……?」
 
桐島「ふふふ。俺ら放送部だよ? いろんなところにアンテナを張り巡らさないといい情報は拾えないしね」
 
乃凪「……それって、西村の問いかけと微妙にずれた返答じゃないか?」
 
桐島「ん? 何か言ったかな? そんなこと言うと君を放送部に連れて帰るよ?」
 
乃凪「止めてください、なんか改造されそうだから。しかも下っ端の構成員に」
 
桐島「そんなことしないよ。あんなにキーキー自己主張の激しい彼らに薄い君がなれるとも思えない」
 
乃凪「お前が俺を必要とする意味が分からない」
 
内沼「ちょっとノリちゃん。何そんな奴に律儀に突っ込みいれてるのさ」
 
乃凪「はッ! そういえば! ついつい身体が反応してるッ!」
 
内沼「そういう奴はかまえばかまうほど付け上がるんだよ? 分かってる?」
 
「内沼先輩。それはご自分にも適用できる台詞です」
 
和原「耕介言い過ぎ」
 
あかり「和原くん。それも一見フォローの様でフォローになってない……」
 
和原「え?」
 
桐島「まあまあ。突っ込みは男の本能だからしかたないよね」
 
乃凪「レッドカードッ! 退場ッ!!」
 
内沼「そうだよ馬鹿ッ! 西村の前で変な発言すんなよッ! 大体世の中には突っ込まれる方が好きな……」
 
乃凪「お前も退場だッ!!」
 
あかり「は、ははは……」
 
「いつも思うけど、ほっとけば何のことを言ってるか分からない台詞に異様に反応するよね、先輩たち」
 
和原「しょうがないんじゃないか?
 二人ともまだ血気盛んな若者だから。若さゆえにはしゃいじゃうのってしょうがないよ」
 
あかり「二人とも、冷静だね……」
 
 
 
和原くんも、雨宮先輩が目の前にいるときは割りとはしゃいでると思うんだけどな……。
 
 
 
「……さてと、この人達はほっといて。そろそろ委員長を探してくるよ」
 
あかり「あ、待って。私もいくよ」
 
桐島「あれ? 校内放送使いたいんじゃなかったの?」
 
「たかが委員長の遅刻ぐらいで放送してもらうのは、風紀の沽券にかかわるかと」
 
桐島「うーん、沢登の存在自体を肯定してる時点で沽券も何もないと思うのは俺だけかな?」
 
乃凪「そういう悲しくなるようなことは言わないでくれ」
 
 
 
先輩たちの会話を聞きながら、教室に備え付けてある時計を見上げる。
時刻は、私がここへ来てから数え、30分は経とうとしていたのだった。
 
 
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