沢登「昔々、あるところに薄毛で悩む少年がおったそうな」
 
沢登「完」
 
亜貴「開始早々終わってる!?」
 
義之輔「違うのサワリン! そんな話じゃないの!!」
 
沢登「それは失敬。
 では、バラの蕾の様に甘美な香りを撒き散らすかの如くの僕の悠然なる本領をとくとご覧あれ……」
 
沢登「……それは、とある生暖かい風が吹く夏の一夜の出来事であった」
 
沢登「深夜、祖父の水虫薬を買いに出かけた乃凪少年は、そこで地元のごろつき共に囲まれる」
 
沢登「あわやという所を、通りすがりのマダムに助けられるのだが……実は、彼女は“彼”だったのだ」
 
沢登「“彼”の名前は蘭子。体は男、心は女性の“彼”は、やはり“彼女”と呼ぶのがふさわしいだろう」
 
沢登「彼女は近くのショッピングスクエアーの華川屋で店主を務める傍ら、夜は地元のやーさんにも一目置かれる程の権力を持つトラブルシューターだった」
 
沢登「そんな、180cm越えのファイター風味な蘭子に乃凪少年は臆面も見せず、何度も何度も頭を下げ、丁重にお礼を述べる」
 
沢登「その姿を見て、蘭子は乃凪少年に、遠い日に恋焦がれた初恋の人の面影を見る」
 
沢登「そう、その初恋の相手も薄倖そうな体裁をしていたのだった」
 
沢登「乃凪少年と別れた後、蘭子は熱病のような恋煩いに掛かってしまう」
 
沢登「来る日も来る日も夢に見るのは、あの儚げな笑みを浮かべる少年」
 
沢登「仕事も手につかず、ため息ばかりを吐く様になった蘭子を、苦悶の表情で見守る執事のノルレッテ」
 
沢登「彼もまた、恋煩いに掛かっている一人である」
 
沢登「そう、目の前の蘭子、その人に……」
 
沢登「こうして始まった愛のトライアングル。蘭子は乃凪少年に思いを伝えることが出来るのか!
 次回、“愛する彼は既にこぶ付き!?” 乞うご期待!」
 
亜貴「………………」
 
亜貴「…………捏造ですよね?」
 
沢登「愛は精神論なのだよ」
 
亜貴「聞いてません、そんなことは」
 
義之輔「来週も、見〜るるん♪」
 
亜貴「ヨッシー萌え系?!」
 
END.