店員
「お待たせしましたー!」
そう言って料理が次々と並べられる。
友人とカラオケに行っても一度に数品しか頼まないので、ワゴンで運ばれてくるのを見たのは初めてだ。
というか、ワゴンがある事も初めて知った。
やっぱりシェアするつもりで頼んだのだろうか……?
そんな事を思っていると彼はテーブルの端に置かれたパフェを私の前にトンと移動させる。
二ノ瀬
「これ、よかったら食べて」
澪
「いいの? じゃあ先にお金を――」
二ノ瀬
「これは俺の奢り。先に言うと絶対遠慮されるから勝手に頼んだんだ」
二ノ瀬
「要らなければ俺が食べるし気にしないで」
澪
「えっと、それじゃお言葉に甘えて……ありがとう」
二ノ瀬
「他の料理も食べていいから」
そう言って手元のポテトを食べ出す彼の横で、私もパフェに手を付けた。
美味しい。
料理屋でもないカラオケチェーンの軽食だけど素直にそう思った。
思えば学校はもちろんの事、プライベートでも誰かと食べるのは久しぶりだ。
中学の友人達とはたまに会っているが、南青瀬にはそんな親しい間柄の人間はいない。
それについて何か思ったことはない。
ナツコさんや向こうの友人がいれば十分だった。
だけど……それでも誰かと食べる食事は良いものだと思った。