神さまと恋ゴコロ ショートストーリー6 東條昴

 東條昴、17歳。

 明るくて、ちょっと馬鹿で。

 女の子が大好きで、彼女達からも好かれるハッピーな男。

 しかし同性の友人は1人しかおらず、そのたった1人からも「貴方は友人ではなく知人です」と言われてしまう可哀想な人。

 学校では明るい感じ。街ではクールな感じ。大好きな彼女達が望む「東條昴」を演じる。

 では一体、どちらが本当の彼なのか……。

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誠司 「ねえ、昴。さっきの……何?」

昴 「え? 何って、何??」

誠司 「女の子に対しての態度。学校と全然違うよね?」

昴 「んー? だってあれ、別人だもん」

誠司 「…………はい?」

昴 「あれはね、街モードなの。街で逢った女の子に対しては、くーるで格好良い俺なの」

昴 「で、今はお前相手でしょ? 学校モードの明るく楽しい俺!!」

誠司 「…………」

昴 「あれ? もしかしてあっちの方が良い? 今度から変える??」

誠司 「え?」

昴 「お前の好きな方の俺でいてあげる。友達だから、特別な?」

誠司 「…………」

昴 「黙ってどうしたの。いつもみたいに偉そうにしろって、そっちの方がお前らしい」

誠司 「…………嫌です」

昴 「嫌? 何で? こっちの俺の方が良いっていう子が多いのに」

誠司 「正直に言います。今、とても気分が悪いです」

昴 「っ……正直すぎ。酷い奴」

誠司 「悪かったね。でも戻して」

昴 「ふーん、そっかあ! じゃ、そーしよっかな!!」

誠司 「…………」

昴 「? どうかした?」

誠司 「よく考えたら昴のことだし、別にどうでも良いですよね」

昴 「え……」

誠司 「どうでも良いよ。貴方がどんなでも」

昴 「よく……ないでしょ? 俺は、よくな――」

女の子 「昴じゃん! ちょうど良い所で逢えた!!」

昴 「あ……や、やあ。どうしたの?」

女の子 「って、隣の格好良い子は友達? 紹介してよ」

誠司 「…………」

昴 「ああ……ごめん、こいつ人見知りでさ」

女の子 「ふーん。じゃあさ、昴だけでもこれから時間取れない? 好きそうなお店、見付けたの」

昴 「マジで? それなら行こうかな」

昴 「おい誠司、お前もちょっとなら……って、待てよ!!」

女の子 「え! 昴!?」

昴 「待って! ま、待てってば、誠司!!」

誠司 「……それ、どっちの昴?」

昴 「え……」

誠司 「街モード? それとも学校モードですか?」

昴 「っ……それは」

誠司 「ここは、街ですね?」

昴 「う、ん……でも、誠司が相手だし」

昴 「さっきは女の子と話してたけど……でも、置いて来ちゃって」

昴 「……わかんない」

誠司 「……あのね。貴方が何も言わないから、何をそんなに気にしてるのかなんて知りませんけど」

誠司 「街モードだとか学校モードとか、僕にとってはどうでも良いんだよ」

昴 「…………」

誠司 「自分のこと変えてまで、他人に好かれたい? 本当に昴のことを好きな子が現れても、そうやって嘘をつくの?」

昴 「う、嘘じゃないよ! でも……本当の俺なんて誰も知らない。学校では明るくて、馬鹿やって……街ではクールで、お洒落な俺がいるはずなんだ」

昴 「望まれてるんだよ。そうするしかないじゃないか!」

誠司 「僕は望んでないけど」

昴 「っ……じゃあ……お前は本当の俺のこと、分か――」

誠司 「分かりません」

昴 「っ!?」

誠司 「分からない。僕は知らない。どうでも良いって言ったでしょ」

昴 「……もう、何なのお前。そこはお前のことなら分かるよとか……言えよ」

誠司 「嘘をついて欲しいの? ……それって、本当に友達?」

昴 「…………」

昴 「ごめん、馬鹿なこと言った」

誠司 「気にしてないよ。いつものことでしょ」

昴 「う……」

誠司 「良かったね? いつも同じ昴なんだから、僕の前で何とかモードとか作らなくて良いじゃない」

昴 「え? あ、うん。そうだね」

昴 「何かうまく丸め込まれた感じするけど……ありがとな」

誠司 「早く……分かってくれる子が現れると良いね?」

昴 「え?」

誠司 「貴方の面倒を見るの、そろそろ代わって欲しいです」

昴 「そ、そんなこと言うなよ! 俺達、友達だろ!?」

誠司 「はい? 誰がそんなこと言いました?」

昴 「お前だよ! 本当に友達だと思ってくれたから、嘘つかなかったんだろ!?」

誠司 「………………はい?」

昴 「聞こえない振りすんなっつーの!!!!」

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 東條昴、17歳。

 本当の彼なんて誰も知らない。本人でさえよく分かっていないけれど、彼はそれでも良いと思っている。

 どんな自分でも受け入れてくれる人が現れれば、自ずと答えは分かるから。

 だからそれまでは自由に生きるのだ。

 同じように、どんなことでも受け入れられるような“本当に好きな人”が現れる――その時まで。