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― STORY ―
夏休みを控えた6月の終わり。
1年で最も長い休みを前に浮かれる学生達。そんな彼等とは対照的に、どこか諦めを含んだ冷めた目の少女がいた。

その少女には秘密がある。

2年前に自宅で起こった傷害事件。被害者も加害者も名前を伏せられ新聞の片隅に小さく載っただけの、誰の記憶にも残っていないその事件の被害者が彼女だった。
加害者は双子の兄で、彼は現在少年院に収容されている。彼は沈黙を続けており、凶行に及んだ理由は今なお不明だ。

ただ、次に会ったら自分は確実にされると、確信めいた予感がしていた。

その兄が7月に少年院を退院する。
殺される位なら、その前に死んでしまおうか。そんな馬鹿な事を考えたりもしたが実行に移すことはなかった。
だけどそろそろ時間切れだ。

そんな事を思っていると、一人の少年に声を掛けられる。見れば自分と同じ学校の制服を着ており、隣のクラスの男子だという。
彼は少女からただならぬ気配を感じ取り声を掛けてきたようだった。だが、干渉されたくない少女は少年を冷たくあしらいその場を立ち去る。

しかし……翌日から少年は少女のクラスにまで現れしつこく付きまとうようになった。
悩みがあるなら自分でなくても良いから相談するべきだ。そう言う彼に根負けした少女は、事件の事を話せば怖がって離れるだろうと全てを打ち明ける。

だが、逆効果だった。
彼は「相談された以上は自分が責任をもって共に解決策を探す」と言い、更に付きまとうようになる。

そんな彼に少しずつ心を開きながら、ついに迎えた兄の退院日。兄を迎えに車を出した父親から連絡が入る。

家に帰る途中で兄が姿をした、と。