「…………」
「? 何だよ、嬉しそうな顔して」
「お誕生日のプレゼントを頂きました」
「へえ、どんな?」
「とても美味しそうな焼き菓子の詰め合わせです。幸せです。ありがとうございます」
「いや、誰に言ってんだよ」
「贈ってくれた友人にです」
「“あなたに出会えたことが私にとって大事なことの一つです”
 というメッセージまで頂きました」
「……良かったじゃん」
「はい、そのように思って頂けてとても嬉しいです。
 この世に生まれた甲斐があるというものです」
「いやいや、それは流石に大げさじゃね?」
「そうでしょうか。生まれなければその友人にも出会えていません」
「それに、このような幸せな気持ちも味わうことができません」
「…………」
「なので己の誕生日には改めて母と祖父にも感謝するのですが……
 どうしたのです、突然遠くを見るような目をされて」
「……お前って、育ちが良いよな」
「……? 貴方の方が育ちが良いと思いますが」
「そういう意味じゃなくってさ。悪意ってもんがないっていうか」
「そうでしょうか。自分ではそのようには思いませんが」
「ですがそう言って頂けるのは嬉しいです。育ててくれた家族も喜びます」
「はー……」
(ため息を吐かれた)
「……俺にはできそうにねーわ」
「何をですか?」
「いや……くれた相手にお前みたく感謝を尽くせる気がしないって話だよ」
「俺だとそもそも自分の気にくわないもんを送られたらその場で顔に出しそうだし」
「場合によっては『好きじゃねぇ』とか喧嘩売りそうだし」
「なるほど。……それはそれで良いのではないでしょうか?」
「何が?」
「貴方の誕生日に贈り物をする相手というのは、
 恐らく貴方と懇意にしている方でしょう」
「ならば、貴方がどのような性格かご存知でしょうし、
 貴方の物言いにだってめげないでしょう」
「それって俺側がめちゃくちゃ相手に甘えてることにならねーか?」
「そうですね」
「……それもどうなんだ」
「そういう風に相手の方を想える貴方でしたら、きっと大丈夫です」
「いや、何が大丈夫なんだよ」
「きっと、その相手の方に対し貴方は言葉を尽くせます。そういう大丈夫です」
「…………」
「……今度、お前を育てた家族に会ってみてーわ」
「なんと、それは俗に言う『両親にご挨拶』というやつでしょうか?」
「ばっ……ちっげーよ! 神妙な顔で何言ってんだ!」
「違いましたか。残念です」
「…………」
「……申し訳ない、困らせるつもりはなかったのですが」
「謝んなよ。困ってねーし」
「そうなのですか?」
「……別に完全に違うって訳でもねぇから」
(おぉ……)
「……つぅか、後で俺からのも受け取れよな」
「! 頂けるのですか?」
「やるよ、当たり前だろ?
 ったく……秘密にしておこうと思ったのに、思わず言っちまったし」
(とても楽しみだ)
「……なんかさ、改めて『生まれて良かった』なんて思ったことはねーけど」
「? はい」
「俺も、お前と同じように誕生日には両親と……それと、
 家の連中にありがとうって伝えるわ」
「それはとても良いことです。私も後で祖父に電話したいと思います」
「おう」
「……会話、してみますか? 祖父と」
「お……おう」
「無理にとは」
「する!」
「……はい」
「何ニヤニヤしてんだよ!」
「椋人くん」
「な、なんだよ……」
「私はとても幸せ者です」
「……ったりめーだろ、俺の彼女なんだから。つまんねぇ思いなんかさせねーよ」
「誕生日おめでとうな、風羽」
「はい、ありがとうございます椋人くん」
「……私を祝ってくださった貴方も、ありがとうございます。
 これからも末永く私とお友達でいてくださると幸いです」

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