「数ヶ月前にツイッターで皆さんに企画を募りましたよね」
「ああ、したなあ」
「とりあえずまとめてみました」
「今!?」
「ええ」
「そ、そう……で、どうだったの?」
「まとまりませんでした」
「小田島、口から血が……」
「とりあえず夏の話題を最優先に纏めてみました。
 ……先輩、後は宜しくお願いしますね」
「え……ちょ、夏なんて終わっ……」
合宿の俺ら
「という訳で合宿だ!! 飯ごう炊飯だ!!」
「おー」
「おい、どこだよここ! 急に山奥につれてきやがって!」
「私の実家の近くの山です」
「葉村くん、寮を出るときに説明、されたよ……?」
「俺が言いたいのはそういうことじゃねーよ! 計画性がねーって言ってるんだ!!」
「たとえばこの合宿が昨日決まったことじゃなくて、
 計画的に練られた案件でも君は文句を言うと思う」
「流石に言わねーよ」
「あ! 猫!」
「! ど、どこですか!!」
「おお、お二人とも。あまり動き回ると危ないですよ。この山には……」
「はーっはっはっはっはァ!!」
「……戸神先輩が住んでるのか?」
「いえ、違います。侵入者排除の為に罠が沢山仕掛けれられているのです」
「後葉村、戸神は今俺達と寮で生活してるよね?」
「いや、なんつぅかこういう場所って戸神先輩の一人や二人いそうだなと」
「オカルト駄目なくせにそういう発言はするんだね」
「……考えれば怖ぇな、いろんな意味で」
「でも、本当。鬱蒼としてて何かでそう……」
「はーっはっはっはっはっはっはァ!!」
「戸神先輩とかな」
「話が戻ってる、よ?」
「よおし、お前ェらキノコ狩りに行くぜ! さあ付いてきやがれ!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……え、あの、戸神行っちゃったよ? 誰か付いて行かないの?」
「俺は嫌だ」
「僕も……」
「蚊に食われそうなので」
「そもそも戸神先輩の歩くスピードに追いつけないよ。それで森で迷っちゃっても……」
「……それ以前に先輩、この森詳しいのか?」
「さあ……」
「でも、戸神先輩なら、僕らの匂い、辿れそうだよね?」
「あー、確かに先輩なら……」
「君達、戸神のことなんだと思ってるの? 大型犬か何かだと思ってる?」
「痛ェぜ!」
「……? 今の戸神先輩の、声?」
「漏れなく罠に掛かったんじゃないかな」
「期待を裏切らなくて流石戸神先輩だね」
「さて、合宿といえば抱負を語り合う場です。皆さん、夏の抱負を是非……」
「いくらリクエストだったからってそういう風に雑にねじ込むのやめて……!!」
「今出てるカエリーナタンのグッズ全種網羅」
「普通の家の親ならお前の小遣いの使い方、泣いてるところだぞ」
「今積んでるゲームを、夏休みの内に、クリアーしたいです!」
「うん俺らの夏休みはまだ終わってないもんね! ね!!」
「特には……」
「広瀬お前ってやつは本当に広瀬」
「ネコさんのお友達を増やす!」
「ああ、凄い法月っぽくて素敵だと思う! うん!」
「お肉がたべたいですね」
「それただの感想な! 抱負とか関係ないよな!」
「あの、いつもより多く、とかじゃ……」
「あー……」
「というかさっきから合いの手うるさいんすけど」
「いや、なんていうか抱負っていう抱負になってない気がしたから
 無駄にテンション上げてごまかそうかなと」
「というかミサキちゃん、“夏が感じられる抱負”を聞きたいかな?」
「先生の髪の毛が暑苦しいから切って欲しいっす」
「は、はい……」
「あー、いいね。夏って感じだね」
「さんせーい」
「何だろう、うん。そういうの、ちょっと違うと思うの、俺」
「皆さん、先生の髪の毛は先生のアイデンティティーです。
 切ってはいけないものです」
「菅野……!!」
「私の頭のてっぺんにあるものと一緒です。切ると力が出ないのです」
「え! そうなの!?」
「た、大変! スガちゃんの触角を守らなきゃ!」
「いやいや、常識的に考えてねぇだろ」
「ハムの人でなし! スガちゃんがどうなってもいいの!?」
「そ、そうだよ!!」
「……おい広瀬、どうにか」
「火種を持ってこないで。自分で消火して」
(む、冗談だったのだが……)
「お前ェらキノコとってきたぜ!!」
「あ、おかえりー……って、随分カラフルなキノコね」
「明らかに食べてはいけない奴ですね」
「なんだ、好き嫌いしてると俺みたいになれねェぜ!」
「いや、なりたくねぇんだぜ」
「ぶっ!」
(おお、三人が一斉に吹き出し笑いを)
「な、何だよお前ら!」
「え、ええと……」
「いや、君案外ユニークな人だったんだね?」
「うんうん」
「うっせえな! 普通の返しだろ単に!!」
「葉村くん、顔が真っ赤です」
「お前も言うんじゃねーよ!!」
「ぐすっ……椋人くん、お友達沢山良かったね」
「それことあるごとに言うの止めてくれねーか?」
「ところで戸神先輩、お怪我は大丈夫ですか?」
「お? お前ェなんで俺が怪我してるって知ってンだ?」
「“痛い”という声が聞こえたのもありますし、足首にトラバサミが」
「げ、マジだ」
「?! て、手当てしなきゃ……!!」
「お前大丈夫かよ戸神」
「今は痒い程度だぜ!」
「……ええと、血は出てないね。何故か」
「ええ、皮膚で止まってますね。流石先輩、丈夫です」
「それで済ませられるのかよ」
「え、ええと……この山、普通にこういうの沢山仕掛けてあるの?」
「はい。鍛錬するのに最適かと」
「普通に俺らが掛かったら死ぬよね?」
「トラバサミなら死にゃしないが、この大きさだと骨折か……な?」
「アンタよくも俺達をここに連れてきたな!?」
「ごめんね! まさかこんな兵器があるなんて!!」
「おお、落ち着いてください。大丈夫です、下山するなら私が先陣を切りましょう」
「駄目だよスガちゃん、危ないよ!」
「いえお任せを。
 この私の触角がダウジングの役目を果たします。なので罠も回避できます」
「そう言って、彼女はウインクしながら、親指を立てた。
 僕はそんな彼女を見て、格好いいなぁと思った。終わり」
「終わりかよ! 下山は!?」
「そういえば、ツイッターでは空閑の“お誕生日おめでとう”がなかったな。
 寮ではお祝いしたけど」
「ちょ、まだ話が……! ……そういえばそうだな」
「あ、でも、僕だけじゃなくて、小田島先生と水城先輩も、ありませんでしたよ」
「何か理由があるのかな?」
「単にツイッターで全返信が終わるまで誕生日イベント控えたんだと思いますよ」
「なるほど。いつもコメントくれる皆、ありがとな!」
「あ、ありがとうございます!
 ……でも、それでも一言ツイッターで欲しかった、なぁ……」
「お、落ち込むなよ……
 しゃーねぇな、じゃあ広瀬の誕生日に空閑のお祝いをツイッターでやるから!」
「……え」
「本当? 嬉しいなあ!」
「え、空閑くんはそれでいいの? 自分の誕生日じゃないよ?」
「うん! お祝いしてもらえるの、嬉しい!」
「あー……そうなんだー……」
「……え、これ俺への嫌がらせの為に空閑くんの誕生日を祝わなかったとかじゃ……
 ないよな……?」
「それでは皆様、ごきげんよう……」
「え、誰の否定もない……?」
つづく……?

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