主人公「先生は……子供なのか、大人なのか分かりません」
「別にどっちだって構わないさ」
主人公「どっちでも良いんですか?」
「うーん……ま、良くないっちゃ良くないかもしんないけど」
主人公「どっちですか……」
「……どうすれば大人になれると思う?」
主人公「え?」
「俺もさ、お前くらいの歳には早く大人になりたくて、やきもきしてたんだ」
「でもさ、日本の法律ではさ、二十歳越えたら社会人の仲間だって風になってるけど、二十歳なんて大学通ってればまだ学生だぞ?」
「それに、長い人生の中でたった二十年生きただけで、何か権力があるわけでもない。あるのは、エネルギッシュな若さだけさ」
主人公「……それって、どういう意味なんですか……?」
「ただ歳を重ねるだけが、大人になるわけじゃないってこと」
「俺は、大人っていうのは、今まで自分が経験してきたことを活かして、問題にどう対処出来るかってことなんだと思うぞ」
「そう考えれば、俺とお前もそんなに変わらないだろ?」
主人公「…………確かに」
「ほら」
主人公「冷たッ」
「はははっ」
主人公「…………もうッ!」
「ははっ。
まあ、人はいつか大人になるけど、変わらないものだってあるんだけどな」
主人公「それは……?」
「自分が自分でしかないってこと」
「大人でも子供でも、俺は、真朱柑に変わりありません」
主人公「…………」
主人公「それは、どういう意味なんですか……?」
「今の俺は、お前の担任じゃなくて、ただの一人の男だってことだよ」